偶成 2018 1 8
「偶成」 西郷隆盛
幾歴辛酸志始堅
丈夫玉砕恥甎全
我家遺法人知否
不為児孫買美田
何度も辛酸をなめて、始めて志が堅くなる。
男らしい男というのは、いさぎよく玉と砕けるもの、
なすこともなく生きながらえるのを恥とする。
わが家に伝わる教えを人は知っているだろうか。
それは他でもない、
子や孫のために、財産を残さないということだ。
「偶成」 ふと思いついてできた作品という意味。
「甎全」(せんぜん) なすこともなく生きながらえること。「瓦全」と同じ。
この詩は、大久保利通に送った書簡のなかに出てくるもので、
西郷隆盛の平生の覚悟であったという。
(引用元 「大人の国語力がつく漢詩100選」 守屋 洋 角川SSC新書)